2011年6月20日月曜日

放射線ってなんだろう? その6:放射線その2(ベータ線)

前回は「電荷」の話でした。電荷は小さな粒子が持つ基本的な性格。
それをふまえて、今回はいよいよ「ベータ線」だよ。

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いきなりですが、陽子と中性子の電荷は3分割されているのです。
陽子の電荷は「2/3」と「2/3」と「-1/3」。中性子の電荷は「2/3」と「-1/3」と「-1/3」に分かれている。
陽子は 2/3 + 2/3 - 1/3 =1、中性子は 2/3 - 1/3 - 1/3 =0
この3分割の電荷のうち、1個が変わった時。
陽子は中性子になり・中性子は陽子になる。つまり、陽子と中性子が入れ替わる。
陽子は「2/3」が「-1/3」に変わる。中性子は「-1/3」が「2/3」に変わる。

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電荷の図を、もう少し詳しく描いてみよう。
陽子が中性子に変化する場合:-3/3に対して+3/3が生まれる。
「2/3」から「3/3」を引く。そのかわりに「+3/3」が生まれる。反応の前後で電荷の総数が変わっちゃいけないから。引いた分は、必ず、どこかで足される。

中性子が陽子に変化する場合:+3/3に対して-3/3が生まれる。
「-1/3」に「3/3」を足す。そのかわりに「-3/3」が生まれる。

あたらしく生まれた「3/3」の電荷は、あっという間に壊れてしまう。
電荷を持つ「電子」と電荷を持たない小さな粒子に分かれちゃう。

右上方向に勢いよく飛んで行く「電子」たち。
彼らが「ベータ粒子」。

「3/3」の電荷には「+」と「ー」があるから、
それがはじけて出来た「ベータ粒子」にも2種類の電荷があります。
「+1」の陽電子と、「-1」の電子です。
陽電子の電荷は+1、電子の電荷は−1
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さて、この反応を実際の原子で見てみましょう。

「フッ素18」は陽子を9個持っていますが、ベータ粒子(陽電子)を放出して、陽子8個の「酸素18」に変化します。

陽子を53個持つ「ヨウ素131」の場合。ベータ粒子(電子)を放出して、陽子54個の「キセノン131」に変化します。

ベータ粒子とは、陽子と中性子が入れ替わるときに放出される電子または陽電子のこと。そして、ベータ粒子の流れが「ベータ線」です。

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2011年6月17日金曜日

放射線ってなんだろう? その5:ベータ線の前に、電荷ってなんなの


アルファ線は、陽子と中性子の固まりが原子から飛び出したもの。
というのが前回の話。

今回は数ある放射線の1つ、「ベータ線」のお話です。
……と行きたいんだけど……
ベータ線を分かるためには、「電荷」を知っておいた方が良いと思う。

「電荷」ってのは、小さな粒子が持つ性質のこと。

1...「プラス」
2...「マイナス」
3...「プラスでもマイナスでもない」

の3種類の電荷がある。

原子を構成するキャクターの電荷はこんな感じ。
陽子:「プラス」の電荷を持ってるよ

中性子:「プラスでもマイナスでもない」の電荷を持ってるよ

電子:「マイナス」の電荷を持ってるよ

各キャラの電荷がわかったところで、原子を見てみよう。
安定な原子。ヘリウム原子(He4):陽子2個、中性子2個、電子2個
上の図、ヘリウム原子の場合。「陽子」2個。「中性子」が2個ある、


陽子数と中性子数って、どんな原子でも等しいわけじゃない。
陽子の数が多くなってくると、プラスの電荷を中和するために、より多くの中性子が必要になってくる。

たとえば、ヨウ素原子の場合。
53個の「陽子」に対して74個の「中性子」を持っている。
安定な原子。ヨウ素原子(I127):陽子53個、中性子74個
陽子と中性子。安定なバランスは原子ごとに異なっています。

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さて次回は、バランスが崩れた原子、陽子と中性子のお話です。
いよいよベータ線の登場!

2011年6月14日火曜日

放射線ってなんだろう? その4:放射線その1(アルファ線)

不安定な原子が壊れる時に「放射線」を出す。というのが前回の話

原子によって、いろいろな壊れ方があるから、
原子によって、出す放射線の種類が違ってくる。

今回は数ある放射線の1つ、「アルファ線」のお話です。

これは、ウラン238。陽子を92個と中性子を146個を持っています。
「ウラン238」原子番号92・質量数238
ウラン238は不安定な原子。
だから、時間が経つと壊れてしまいます。
「トリウム」という別の原子になってしまう。
「トリウム234」原子番号90・質量数234
左側にある数字に注目。
陽子の数が2個減って、「92」から「90」に。
左上は陽子と中性子の足し算の数。
「238」から「234」に減ってる。ってことは中性子も2個無くなってる。

ウランは、陽子と中性子を2個づつ失ってトリウムへと壊れていく。
U238からTh234へ。陽子と中性子が飛び出す。

崩壊する原子から飛び出した、陽子2個と中性子2個の塊。
これが「アルファ粒子」。アルファ粒子の流れを「アルファ線」と呼びます。
アルファ粒子
アルファ粒子。それは原子が崩壊するときに出される陽子と中性子の塊。
これがアルファ線の正体です。

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さて次回は、放射線その2(ベータ線)のお話です。

2011年6月11日土曜日

放射線ってなんだろう? その3:同位体

陽子の数が変化すると原子の種類が変わる。というのが前回の話
では、
中性子の数が変わると原子はどうなるのか。
炭素原子
たとえば、炭素。
左下に「6」、そして上には「12」という数字がある。

下の数字は「陽子の数」。上の数は「陽子の数」+「中性子の数」。
つまり、この炭素原子には、6個の陽子と6個の中性子が入っていますよ。という意味。

原子には中性子の数が異なる兄弟がいます。炭素の場合、中性子6個・7個・8個の兄弟がいる。つまり、上の数字が12・13・14という3種の炭素があります。

この兄弟が「同位体」です。
英語で書くとisotope。語源はギリシャ語「同じ(isos)場所(topos)」。中性子数が異なっていても原子としての働きは同じ。

違いは、「壊れちゃう」同位体がある、ということ。
炭素12と炭素13は壊れない。炭素14は壊れる同位体
炭素の同位体の中でも、中性子を8個持つ炭素14。
これは、時間が経つと崩壊して炭素じゃなくなってしまいます。炭素14は窒素に変化していくのです。

原子は壊れるときにエネルギーを放出します。
これが「放射線」。

放射線を出す原子、つまり壊れる原子、が「放射性物質」です。
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放射線にもいろんな種類があります。それは原子の壊れ方が違うから。
さて次回は、放射線その1(アルファ線)のお話です。

2011年6月9日木曜日

放射線ってなんだろう? その2:原子の正体

さて、原子の話。

僕らの体は原子で出来てる。
だいたい6種類くらいの原子。炭素、水素、窒素、酸素、硫黄、リン。

この原子たち、なにが違うのだろう。
炭素と水素の違いはなんだろう。

原子を形作る、より小さい粒子がいる。
陽子:原子の真ん中にいるよ

中性子:原子の真ん中にいるよ
電子:原子の外側にいるよ
この3種類が原子の中身。
僕が吸い込む酸素も、輝くダイアモンドも、美味しいお肉も、燃えるウランも、
全部、この3種類で出来てる。


酸素はこんな感じ。
酸素原子:陽子8個、中性子8個、電子8個

そしてヘリウムはこんな感じ。
ヘリウム原子:陽子2個、中性子2個、電子2個

つまり、原子の種類ってのは、陽子・中性子・電子の数の違いなのです。

陽子の数が変わると、原子の種類が変わる。陽子の数が1個でも増えたら、全く違う原子になっちゃう。

陽子と原子の関係が一目でわかる、表があります。
周期律表。

周期律表:空っぽの箱にも原子が入るのですが、省略してあります。
左上の「H(水素)」の陽子は1個。
まっすぐ右へ進んで「He(ヘリウム)」は2個の陽子を持っています。
いきどまったら、左に戻って一段下がる。
「H」の下にある原子は3個の陽子を持つ。その右は4個の陽子。
谷間を超えて右へ。
陽子5個の原子があって、その右には陽子を6個持ってる「C(炭素)」がある。
ドンドン進んでいこう。
陽子53個のI(ヨウ素)が見えてくる。そして欄外にあるU(ウラン)の陽子は92個。

陽子の数と原子の種類、この間には密接な関係があります。

 詳しい周期律表
wikipediaより

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じゃあ、中性子の数が変わったとき、原子はどうなるのだろう?
次回はついに、放射能のお話です。

放射線ってなんだろう? その1:言葉は知ってるけど…

2011年3月11日の地震で福島の原子力発電所が壊れた。
放射性物質が僕の住む東京にまで降ってきた。

This is a satellite image of Japan showing damage after an Earthquake and Tsunami at the Dai Ichi Power Plant, Japan. (credit: DigitalGlobe)

それ以降、ニュースには「放射能」や「放射線」といった単語が溢れてる。
アルファ線とかベータ線とかガイガーカウンターとか、カッコいいカタカナでいっぱい。
でも、僕はその言葉の意味を知らない。

なんだかわからない単語を会話に使って、相手から意味を訪ねられたら困る。
今まで話していた内容すべてがウソになってしまいそう、空っぽになってしまいそうだから。

恥をかきたくない。
そんな思いから、もう一度、理科を勉強してみました。
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放射線を知るには原子を知らなきゃ。
なので、次回は原子のお話