2011年8月18日木曜日

Central dogma

タンパク質って言葉を聞いたことあると思う。
栄養素の1つ、という認識かもしれない。

でも、それだけじゃない。
じつはタンパク質って「超小さな機械(ナノマシン)」なんです。

「ポテチを消化」したり「アルコールを分解」したり「指でキーボードを叩い」たり「液晶画面を見た」り。
リラックスしてビール飲んでウェブサイト眺めてるとき。こんなときでも、ナノマシンは猛烈に働いている。

彼らが動くのをやめたとき。
僕らはまったく動けないし考えられないし、息すらできない。
つまり、死んでしまう。

命そのものともいえる、タンパク質。
これを作る仕組みを「セントラルドグマ」と呼びます。

DNAは有名だけど。RNAはマイナー。
この2つは親子みたいな関係です。親がDNAで子がRNA。

細胞の中でタンパク質が作られるとき、
まず、DNAを基にしてRNAが作られます。
そして、RNAを基にしてタンパク質が作られるのです。

An overview of the (basic) central dogma of molecular biochemistry with all enzymes labeled.
 Dhorspool at en.wikipedia) Daniel Horspool

これがセントラルドグマ。

---

さて、次回はいよいよ、
ウイルスが僕らの体に入った時どうなっちゃうの?です

次回、「ウイルスの増殖」です。

2011年8月16日火曜日

ウイルスと免疫 その1:手足口病・ヘルパンギーナってなんだろう?

「手足口病」流行ってますよね。
子供だけの病気かと思ってたら、妻が罹って口内炎が酷いことに。
なかなか治らないから、ちょっと大変。

今年は罹ってないけど、夏に流行る「ヘルパンギーナ」。
これって手足口病と似てる。

身内に患者が出ちゃったので調べてみました。ウイルスのこと。
(放射線ネタはこのシリーズが終わってから再開予定です)

---
●原因は何?

手足口病もヘルパンギーナも「ウイルス」が原因の病気。
エンテロウイルスっていう名前のグループ。
グループということは、手足口病・ヘルパンギーナの原因ウイルスは1個じゃなく複数。

手足口病の原因ウイルスは「コクサッキーA16」ほか沢山。
ヘルパンギーナは「コクサッキーA4」ほか沢山。

同じエンテロウイルスで、同じコクサッキーウイルスなのに数字だけが違う。
この2つのウイルスは兄弟みたいなもの。

原因ウイルスが似ているから、手足口病とヘルパンギーナの症状は似ているのです。

---
●ウイルスって何?

メチャクチャ小さな粒です。
Entero virus 直径30nm
どのくらい小さいか、っていうと。
たとえば、大腸菌は1mmの1000分の1の大きさ。
エンテロウイルスは、さらに小さく、その30分の1。
つまり、
エンテロウイルスは30nmくらいのサイズです。


その小さな粒の中に、小さな遺伝情報だけを入れたもの。
それがウイルス。





エンテロウイルスは「タンパク質の殻」と「1本のRNA」。
たったこれだけの生き物。
ずいぶんとミニマルな存在です。

エンテロウイルス断面図:タンパク質のCapsidの中に1本のRNAが入っている
---
●予防策はあるの?

意外と簡単な方法で、感染を予防することができます。
アメリカ疾病予防管理センター(通称CDC)によれば

☆とにかく、「石鹸で手を洗おう!」
☆物を消毒するには「薄めた塩素系漂白剤(水4Lに漂白剤60ccくらい)がいいよ!」
http://www.cdc.gov/ncidod/dvrd/revb/enterovirus/non-polio_entero.htm

また、イソジンガーグル液で効果的に殺すことができるみたい。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9403252

漂白剤で手は洗いたくないけど、イソジンだったら安全だよね。

---

じゃあ、ウイルスが僕らの体に入った時どうなっちゃうの?
でも、その前に、DNAとRNAとタンパク質の関係(セントラルドグマ)を知っておいた方が良いかもしれない。

次回、「セントラルドグマ」です。

2011年7月2日土曜日

放射線ってなんだろう? その7:放射線その3(ガンマ線)

前回は陽子と中性子が入れ替わるベータ線の話でした。
今回は原子から出る光の話だよ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

不安定な原子は、アルファ線やベータ線という放射線を出して、安定な状態になろうとするんだけど。ときには放射線を出しても、まだ力が余っている場合がある。

その余っているエネルギーは「光」という形で放出される。
これがガンマ線。
ガンマ線
ガンマ線は「光」。
僕たちが知ってるあの光。虹色してる可視光線の仲間だ。
種類がちょっと違うだけ。

光は「波であり粒である」というヤヤコシイ存在。
だからガンマ線も可視光線も、波としての性質を持っている。
その一つが「波長」。

この「波長」というのは、波のピーク間の距離。
波と波の間。この距離が波長。
光には「波長0.01nm以下の波から波長1km以上の波」までいろんな種類がある。
可視光線は「波長400nmから700nm」の光。数多くの光のほんの少しのエリアしか、ヒトは認識できない。
長い波長と短い波長 (Image from wikipedia)

さて、放射線はどのエリアに位置しているのだろうか。
下の表(波長一覧表)を見てほしい。
This image comes from the English Wikipedia (Original author : Philip Ronan)
ガンマ線の波長は「0.01nm以下」。表の一番左「γ rays」って書いてある場所。
そして、レントゲン写真でお馴染みの「X線」はその右にいる。波長は「0.1nm」くらい。

「ガンマ線」と「X線」。あまりにも似ているため区別は難しい。
だから、生まれてくる場所で区別している。

原子の中心から出てくる光を「ガンマ線」
原子の周りにある電子から出てくる光が「X線」

実際の原子でガンマ線を見てみましょう。放射性セシウムです。
Cs137→Ba137m→Ba137。ベータ線とガンマ線を放出。
「セシウム137」の大半はベータ線(電子)を放出して、「バリウム137m」に変化する。変化した直後の「バリウム137m」は依然としてエネルギーが高い状態。高エネルギーの「バリウム137m」は「ガンマ線」を出して低エネルギーの「バリウム137」になります。

これで原子は安定。もう放射線は出さない。
放射性同位体「セシウム137」は、まず「ベータ線」を。続いて「ガンマ線」を放出して、安定した原子「バリウム137」になるのです。

---
さて次回は、DNAと放射線のお話。放射線が生物に与える影響について。

2011年6月20日月曜日

放射線ってなんだろう? その6:放射線その2(ベータ線)

前回は「電荷」の話でした。電荷は小さな粒子が持つ基本的な性格。
それをふまえて、今回はいよいよ「ベータ線」だよ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いきなりですが、陽子と中性子の電荷は3分割されているのです。
陽子の電荷は「2/3」と「2/3」と「-1/3」。中性子の電荷は「2/3」と「-1/3」と「-1/3」に分かれている。
陽子は 2/3 + 2/3 - 1/3 =1、中性子は 2/3 - 1/3 - 1/3 =0
この3分割の電荷のうち、1個が変わった時。
陽子は中性子になり・中性子は陽子になる。つまり、陽子と中性子が入れ替わる。
陽子は「2/3」が「-1/3」に変わる。中性子は「-1/3」が「2/3」に変わる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
電荷の図を、もう少し詳しく描いてみよう。
陽子が中性子に変化する場合:-3/3に対して+3/3が生まれる。
「2/3」から「3/3」を引く。そのかわりに「+3/3」が生まれる。反応の前後で電荷の総数が変わっちゃいけないから。引いた分は、必ず、どこかで足される。

中性子が陽子に変化する場合:+3/3に対して-3/3が生まれる。
「-1/3」に「3/3」を足す。そのかわりに「-3/3」が生まれる。

あたらしく生まれた「3/3」の電荷は、あっという間に壊れてしまう。
電荷を持つ「電子」と電荷を持たない小さな粒子に分かれちゃう。

右上方向に勢いよく飛んで行く「電子」たち。
彼らが「ベータ粒子」。

「3/3」の電荷には「+」と「ー」があるから、
それがはじけて出来た「ベータ粒子」にも2種類の電荷があります。
「+1」の陽電子と、「-1」の電子です。
陽電子の電荷は+1、電子の電荷は−1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、この反応を実際の原子で見てみましょう。

「フッ素18」は陽子を9個持っていますが、ベータ粒子(陽電子)を放出して、陽子8個の「酸素18」に変化します。

陽子を53個持つ「ヨウ素131」の場合。ベータ粒子(電子)を放出して、陽子54個の「キセノン131」に変化します。

ベータ粒子とは、陽子と中性子が入れ替わるときに放出される電子または陽電子のこと。そして、ベータ粒子の流れが「ベータ線」です。

---

2011年6月17日金曜日

放射線ってなんだろう? その5:ベータ線の前に、電荷ってなんなの


アルファ線は、陽子と中性子の固まりが原子から飛び出したもの。
というのが前回の話。

今回は数ある放射線の1つ、「ベータ線」のお話です。
……と行きたいんだけど……
ベータ線を分かるためには、「電荷」を知っておいた方が良いと思う。

「電荷」ってのは、小さな粒子が持つ性質のこと。

1...「プラス」
2...「マイナス」
3...「プラスでもマイナスでもない」

の3種類の電荷がある。

原子を構成するキャクターの電荷はこんな感じ。
陽子:「プラス」の電荷を持ってるよ

中性子:「プラスでもマイナスでもない」の電荷を持ってるよ

電子:「マイナス」の電荷を持ってるよ

各キャラの電荷がわかったところで、原子を見てみよう。
安定な原子。ヘリウム原子(He4):陽子2個、中性子2個、電子2個
上の図、ヘリウム原子の場合。「陽子」2個。「中性子」が2個ある、


陽子数と中性子数って、どんな原子でも等しいわけじゃない。
陽子の数が多くなってくると、プラスの電荷を中和するために、より多くの中性子が必要になってくる。

たとえば、ヨウ素原子の場合。
53個の「陽子」に対して74個の「中性子」を持っている。
安定な原子。ヨウ素原子(I127):陽子53個、中性子74個
陽子と中性子。安定なバランスは原子ごとに異なっています。

---
さて次回は、バランスが崩れた原子、陽子と中性子のお話です。
いよいよベータ線の登場!

2011年6月14日火曜日

放射線ってなんだろう? その4:放射線その1(アルファ線)

不安定な原子が壊れる時に「放射線」を出す。というのが前回の話

原子によって、いろいろな壊れ方があるから、
原子によって、出す放射線の種類が違ってくる。

今回は数ある放射線の1つ、「アルファ線」のお話です。

これは、ウラン238。陽子を92個と中性子を146個を持っています。
「ウラン238」原子番号92・質量数238
ウラン238は不安定な原子。
だから、時間が経つと壊れてしまいます。
「トリウム」という別の原子になってしまう。
「トリウム234」原子番号90・質量数234
左側にある数字に注目。
陽子の数が2個減って、「92」から「90」に。
左上は陽子と中性子の足し算の数。
「238」から「234」に減ってる。ってことは中性子も2個無くなってる。

ウランは、陽子と中性子を2個づつ失ってトリウムへと壊れていく。
U238からTh234へ。陽子と中性子が飛び出す。

崩壊する原子から飛び出した、陽子2個と中性子2個の塊。
これが「アルファ粒子」。アルファ粒子の流れを「アルファ線」と呼びます。
アルファ粒子
アルファ粒子。それは原子が崩壊するときに出される陽子と中性子の塊。
これがアルファ線の正体です。

---
さて次回は、放射線その2(ベータ線)のお話です。

2011年6月11日土曜日

放射線ってなんだろう? その3:同位体

陽子の数が変化すると原子の種類が変わる。というのが前回の話
では、
中性子の数が変わると原子はどうなるのか。
炭素原子
たとえば、炭素。
左下に「6」、そして上には「12」という数字がある。

下の数字は「陽子の数」。上の数は「陽子の数」+「中性子の数」。
つまり、この炭素原子には、6個の陽子と6個の中性子が入っていますよ。という意味。

原子には中性子の数が異なる兄弟がいます。炭素の場合、中性子6個・7個・8個の兄弟がいる。つまり、上の数字が12・13・14という3種の炭素があります。

この兄弟が「同位体」です。
英語で書くとisotope。語源はギリシャ語「同じ(isos)場所(topos)」。中性子数が異なっていても原子としての働きは同じ。

違いは、「壊れちゃう」同位体がある、ということ。
炭素12と炭素13は壊れない。炭素14は壊れる同位体
炭素の同位体の中でも、中性子を8個持つ炭素14。
これは、時間が経つと崩壊して炭素じゃなくなってしまいます。炭素14は窒素に変化していくのです。

原子は壊れるときにエネルギーを放出します。
これが「放射線」。

放射線を出す原子、つまり壊れる原子、が「放射性物質」です。
---
放射線にもいろんな種類があります。それは原子の壊れ方が違うから。
さて次回は、放射線その1(アルファ線)のお話です。

2011年6月9日木曜日

放射線ってなんだろう? その2:原子の正体

さて、原子の話。

僕らの体は原子で出来てる。
だいたい6種類くらいの原子。炭素、水素、窒素、酸素、硫黄、リン。

この原子たち、なにが違うのだろう。
炭素と水素の違いはなんだろう。

原子を形作る、より小さい粒子がいる。
陽子:原子の真ん中にいるよ

中性子:原子の真ん中にいるよ
電子:原子の外側にいるよ
この3種類が原子の中身。
僕が吸い込む酸素も、輝くダイアモンドも、美味しいお肉も、燃えるウランも、
全部、この3種類で出来てる。


酸素はこんな感じ。
酸素原子:陽子8個、中性子8個、電子8個

そしてヘリウムはこんな感じ。
ヘリウム原子:陽子2個、中性子2個、電子2個

つまり、原子の種類ってのは、陽子・中性子・電子の数の違いなのです。

陽子の数が変わると、原子の種類が変わる。陽子の数が1個でも増えたら、全く違う原子になっちゃう。

陽子と原子の関係が一目でわかる、表があります。
周期律表。

周期律表:空っぽの箱にも原子が入るのですが、省略してあります。
左上の「H(水素)」の陽子は1個。
まっすぐ右へ進んで「He(ヘリウム)」は2個の陽子を持っています。
いきどまったら、左に戻って一段下がる。
「H」の下にある原子は3個の陽子を持つ。その右は4個の陽子。
谷間を超えて右へ。
陽子5個の原子があって、その右には陽子を6個持ってる「C(炭素)」がある。
ドンドン進んでいこう。
陽子53個のI(ヨウ素)が見えてくる。そして欄外にあるU(ウラン)の陽子は92個。

陽子の数と原子の種類、この間には密接な関係があります。

 詳しい周期律表
wikipediaより

---
じゃあ、中性子の数が変わったとき、原子はどうなるのだろう?
次回はついに、放射能のお話です。

放射線ってなんだろう? その1:言葉は知ってるけど…

2011年3月11日の地震で福島の原子力発電所が壊れた。
放射性物質が僕の住む東京にまで降ってきた。

This is a satellite image of Japan showing damage after an Earthquake and Tsunami at the Dai Ichi Power Plant, Japan. (credit: DigitalGlobe)

それ以降、ニュースには「放射能」や「放射線」といった単語が溢れてる。
アルファ線とかベータ線とかガイガーカウンターとか、カッコいいカタカナでいっぱい。
でも、僕はその言葉の意味を知らない。

なんだかわからない単語を会話に使って、相手から意味を訪ねられたら困る。
今まで話していた内容すべてがウソになってしまいそう、空っぽになってしまいそうだから。

恥をかきたくない。
そんな思いから、もう一度、理科を勉強してみました。
---
放射線を知るには原子を知らなきゃ。
なので、次回は原子のお話